
地面の感覚を足の裏でつかむという感動を再認識してからおおよそ2ヶ月が経ちました。順調に距離を伸ばし、今では4マイルまで走れるようになりました。クライアントの方を含め、周りの人達にベアフットランニングについて色々と話をしてきました。その時々の反応もそれぞれで、もう既に実践しているという方が思ったより沢山いたように思います。常に話題に上るのが①危なくないのか?と②どうして今更ベアフットに変える必要があるのかということです。※ここでいうベアフットランニングとは裸足、又は踵とつま先の高さの差が限りなく小さくかつ底の薄い靴を履き、正しいフォームで走る事を指します。ただ単に裸足で闇雲に走る事とは違います。
①危なくないのか?
確かに裸足で外を走るには色々と問題があります。ガラスの破片や釘や尖った小石や各種動物の排泄物など肉体的・精神的に怪我を負ってしまう危険があります(笑)。どうしても裸足に拘るのならばなるべく清掃の行き届いている場所や競技用トラックやトレッドミルの上で走るようにして下さい。個人的には砂浜などの非常に柔らかい地面でトレーニングをすることはお勧めしません。しっかりした路面で正しいフォームを作ってからの方がより安全だと考えます。裸足ではどうしても抵抗があるという人のために沢山のオプションがあります。ミニマリストやベアフットシューズなどと呼ばれている、つま先と踵の高低差が無くクッションが殆ど無いシューズを履けばなるべく裸足に近い状態で走ることができて、さらに足の裏を様々な障害から守ることが出来ます。
靴屋さんをいろいろ回って、実際に履いて走ってみたりしながら自分に合う靴を色々物色した結果、僕が個人的に気に入ったのはSpeedoのウォーターサンダルとVivobarefootのEvoという靴でした。どちらも共通しているのはつま先の部分の幅がゆったりしていることと、足の裏のクッションが最小限であること、そしてソールが真っ平らということです。
ウォーターサンダルは磯や岩場を歩くときなどに履くもので、水に濡れるのを前提に作られているので通気性もかなりいいです。他のベアフットシューズに比べて価格が圧倒的に安いのでちょっとトライしてみようかなという人には最適だと思います。僕が使っているのはこれ(http://www.speedousa.com/product/index.jsp?productId=3839598&cp=3124322.3124332.3701572.3701573&cid=1062141)です。ただ、ランニング用に作られてはいないので耐久性には少し難ありかと思います。ともかく、最初のウチはそんなに長距離を走ることが出来ないのでこれで十分なはずです。
次にVivobarefootのEvoですが、履き心地はウオーターサンダルとそんなに大差は無いように感じました。ただ、作りがしっかりしているしソールはさらに薄いのでより裸足の感覚に近づけると思います。値段は現在市販されているベアフットシューズの中では一番高いです。足の幅が広い人向けかも知れません。(Vivobarefoot: http://www.vivobarefoot.com/us/mens/evo-37.html/)
この他にもメジャーなところでいうと、VibramやNew BalanceやPumaその他多くのブランドからもベアフットシューズが出ています。いちいちコメントを付けていると大変なので、興味のある方は実際に履いて試してみて下さい。(個人的にメールを頂ければ僕が調べたシューズのリストをコピペして送ります。)ベアフットシューズを選ぶときに注意すべき点はa.サイズが合うかどうか実際に履いて確かめる。b.裸足で履くのか靴下と一緒に履くのかを考慮する。c.出来るならば少し走らせてもらう。の3点です。
②どうして今更ベアフットに変える必要があるのか
ベアフットに変更する利点は関節への負担を減らすことにあると考えています。クッションの薄い靴を履いて走るのに何故関節への負担を減らすことが出来るのか不思議に思われるかも知れませんが、走り方と足の構造にそのヒミツがあります。
走り方からの観点
走るときに踵から着地する方法をヒールストライク、つま先と踵がほぼ同時に着地する方法をミッドフットストライク、つま先が最初に着地する方法をフォアフットストライクと呼びます。厳密には違いますが、ここではフォアフットストライクとミッドフットストライクをほぼ同じとして扱います。
一般的なランニングシューズを履いて走る場合は多くの人がヒールストライクで走っています。それは踵の部分が高いためにそこから着地し易いからです。ヒールストライクの特徴は着地の時点で膝がまっすぐ伸びていることと、着地点が体の重心より前方にあることです。着地点が重心の前方にあると足が着いた瞬間に進んでいる方向と反対側に抵抗が生まれます。この抵抗がブレーキのように働くので効率があまり良くありません。また、膝が伸びきっているので着地時の衝撃がまっすぐ足首、膝、股関節へ跳ね返ります。
これに対し、フォアフットストライクでは着地時に膝が軽く曲がっていて、着地点は重心のほぼ真下に来ます。着地のインパクトを膝の屈伸と足の筋肉によって受け止めることにより関節への負担が小さくなります。また、つま先が最初に地面に着くことによって足のアーチが伸ばされて、そのバネの力を蹴り上げる力に効率良く移行することが出来ます。運動学的にも物理学的にも効率の良い走り方ということになります。
書籍やリサーチなどに掲載されたデータを無視したとしても、やはり人間の体はフォアフットストライクで走るように設計されているとほぼ断言できます。靴を脱いで裸足で走ってみるとその理由が分かります。裸足になって走ったときには踵から着地するとものすごく痛いので、自然につま先から着地する走り方になります。何も考えていなくても自然に体がそのように動きます。これこそ二足歩行の進化の過程で獲得した自然なフォームだからです。
足の構造からの観点
足にはおおよそ20万の神経終末、33の筋肉、28の骨、19の靱帯があります。1970年代以降、足の保護やパフォーマンス向上のために発展を続けてきたランニングシューズですが、結果的には足の筋肉や靱帯を弱めることになっている可能性が高いという研究があります。つまり、現代のランニングシューズの殆どは足の筋肉や靱帯を過剰に保護することによって甘やかしているのです。人間の体は負荷がかかるとそれに対して適応しようとする力が働きます。負荷が減れば体はそこに適応する必要が無いと判断します。骨折の後のギプスを外すと筋肉が弱くなっていたり、宇宙飛行士が地球に帰ってくると骨密度が下がったり立てなくなったりするというのが良い例でしょう。
ベアフットで走ることによって足に対する過剰なサポートを無くし、筋肉や靱帯に適切な刺激を与え、さらには可動域を亢進し強化することができます。筋肉への負担が増える証拠として、ベアフットに移行すると大抵の場合はものすごい足の筋肉痛が襲ってきます。これはランニングシューズに守られていた=サボっていた筋肉が働き始めたサインでもあります。
足の裏にある神経終末は地面の感触や関節の位置情報などを脳に送るので、バランス感覚などを鍛えることも出来ます。さらに、踵が高くない靴を履くと体重が足の裏全体に均等にかかるので良い姿勢をつくる手助けになります。正しい姿勢で走れば疲れにくくなり、怪我の予防にも大きな効果があります。
僕がベアフットランニングをオススメするのは、足のアーチに問題があったり、足首や膝や股関節に痛みを抱えながら走っている方です。一般的なランニングシューズを履いてヒールストライクで走っている方の中には全く問題の無い方も沢山います。その場合は今すぐ変更する必要はないのではないかと考えます。また、フォアフットストライクに移行するにあたり必ずしもベアフットシューズを履かなければいけないこともありません。詳細はVol.3にてお話しします。
次回は実践編です。お楽しみに。
参考文献
1. Bramble, D. M. & Lieberman, D. E. Endurance running and the evolution of Homo. Nature 432, 345–352 (2004).
2. Kerr, B. A., Beauchamp, L., Fisher, V. & Neil, R. in Proc. Int. Symp. Biomech. Aspects Sports Shoes Playing Surf. (eds Nigg, B. M. & Kerr, B. A.) 135–142 (Calgary Univ. Press, 1983).
3. Hasegawa, H., Yamauchi, T. & Kraemer, W. J. Foot strike patterns of runners at 15- km point during an elite-level half marathon. J. Strength Cond. Res. 21, 888–893 (2007).
4. Bobbert, M. F., Schamhardt, H. C. & Nigg, B. M. Calculation of vertical ground reaction force estimates during running from positional data. J. Biomech. 24, 1095–1105 (1991).
ベアフットランニング Vol.2
– July 8, 2011Posted in: カイロプラクティック, リサーチ, 健康全般